「実家の間取りを変えたい」「築40年の家を、屋根から壁までまとめて直したい」——これまで木造2階建ての住宅リフォームは、役所への手続きなしで工事ができるのが当たり前でした。ところが2025年4月の建築基準法改正で、その前提が変わりました。さらに2026年4月に経過措置も終わり、今は新しいルールへ完全に切り替わっています。そして実際に工事の話を進めると、多くの方が「確認申請に必要なので、その家の図面をご用意ください」でつまずきます。
何が変わったのか ── 「4号特例」の縮小
以前は、建築士が設計した木造2階建てまでの住宅(いわゆる「4号建築物」)について、建築確認のときに構造の審査を省略できる決まりがありました。これが「4号特例」です。2025年4月の改正で、この省略の範囲が大きく狭まりました。
- 新2号建築物(木造で2階建て以上、または延べ面積200㎡超)── 新築も大規模リフォームも、全国どこでも確認申請が必要。構造・省エネの図書も提出します
- 新3号建築物(木造の平屋かつ延べ面積200㎡以下)── 従来どおり審査を省略できる範囲が残ります
日本の戸建てで一番多い木造2階建ては、そのまま「新2号建築物」に入ります。「うちは普通の2階建てだから関係ない」ではなく、むしろ対象そのもの、ということです。
同じ改正で、耐力壁の必要量(壁量)や柱の太さの基準も見直されました。住宅の断熱性能が上がって屋根や壁が重くなった分、必要な壁の量も増えたためです。この新基準には経過措置があり、2026年3月31日までに着工する工事は旧基準のままでも申請できましたが、その期限はすでに過ぎています。
どんなリフォームで確認申請が要るのか
キーワードは「主要構造部の過半」です。主要構造部とは壁・柱・床・梁(はり)・屋根・階段の6つ。このいずれかを半分より多くつくり直す工事(大規模の修繕・大規模の模様替え)が、確認申請の対象になります。
必要になりやすい工事
- 間取りを大きく変えるため、柱や壁を何本も抜く/動かす
- 屋根を野地板・垂木から葺き替える(下地ごとやり直す)
- 床を根太・大引きから組み直す
- スケルトンリフォーム、フルリノベーション
- 増築(防火・準防火地域では面積を問わず、それ以外でも10㎡超)
対象にならないと明確化された工事
- 屋根のカバー工法(既存の屋根を残し、上から新しい屋根材をかぶせる)
- 屋根の仕上げ材だけの葺き替え(下地に手を入れない)
- 外装材だけの張り替え、既存外壁の上から重ねる改修
- 室内側から行う断熱改修
- 設備の交換、内装の張り替え、キッチン・浴室の入れ替え
つまり「表面だけを新しくする工事」は今までどおり、「骨組みに手を入れる工事」は手続きが要ると考えるとおおむね合っています。判断は最終的に設計者と審査機関が行いますので、迷ったら着工前にご確認ください。
実際の関門は、法律より「図面が無い」こと
確認申請には、その建物が今どうなっているかを示す図面が要ります。新築時の図面が手元にあれば話は早いのですが、築30年、40年の家では、まず出てきません。
しかも行政に残っている記録も、いつまでもあるわけではありません。確認申請書類の保管期間はおおむね15年です。それより古い建物は、役所に問い合わせても図面そのものは残っていないのが普通です。
図面が無いと、現地で建物を実測して現況の図面を作り起こし、場合によっては壁や天井を一部開けて構造を調べ、その結果をもとに構造の検討と申請図書を作る、という工程が加わります。そのぶん工期も費用も確実に増えます。「見積りが思ったより高い」「着工がなかなかできない」の原因の多くは、実はここにあります。
工事を考え始めたら、まずこの5つを探してください
思い立った日に、押し入れや書類棚を1時間ひっくり返す。それだけで後の工程が大きく変わります。
- 確認済証(建築確認の際に交付された証明書)
- 検査済証(完了検査に合格した証明書。これがあると話が早い)
- 確認申請図書の副本(申請時に提出した図面一式の控え)
- 竣工図・設計図書(工務店やハウスメーカーから受け取った図面一式)
- 建物図面・各階平面図(法務局で取得できる登記用の図面。簡易だが無いよりずっと良い)
見つかりやすい場所は、新築時の契約書・住宅ローン書類と同じ袋の中、仏壇や床の間の引き出し、物置の段ボール、そして建てた工務店の倉庫です。工務店が今も営業していれば、電話1本で控えが出てくることは珍しくありません。
それでも見つからないときは、次の3つの手があります。
- 役所で「台帳記載事項証明書」を取る ─ 建築確認を受けた記録が台帳に残っていれば、確認番号・建築年月日・構造・面積などを証明書として発行してもらえます
- 建築士に現況調査を依頼する ─ 検査済証が無い建物でも、現地調査をもとに「現況調査報告書」を作成すれば、その後の手続きに進める場合があります
- 図面を復元する ─ 現地を実測して平面図・立面図・構造の図面を作り起こします。古い紙の図面が1枚でも残っていれば、その分だけ調査は軽くなります
私達の現場から ── 紙の図面は、あるうちにデータへ
3番目の「図面の復元」で毎回痛感するのが、紙の図面の寿命です。青焼き(ジアゾ複写)の図面は時間が経つと全体が黄ばみ、線が薄れて読めなくなります。湿気を吸って波打ち、折り目から裂けます。残っていても読めなければ、無いのと同じです。
私達の現場でも、リフォームや用途変更のご相談で「図面はあります」と持ち込まれた束が、開いてみると線がほとんど飛んでいた、というケースを何度も経験しています。逆に、古くても状態の良い1枚が残っているだけで、調査も設計も一気に進みます。
工事の予定がまだ無くても、今読める図面は、今のうちにスキャンしてデータで保管する。これが将来のリフォーム・売却・相続のときに、いちばん効きます。CADが扱えれば、こうした現況図の作成や図面の整理を自分の手で進められます。図面を「読む・描く・直す」力は、住宅の実務でこれからますます必要になります。